企業の決算書で、基本的には出てくる勘定科目である「現金預金」。
この現金預金科目は、監査をする場合に若手(特に新人)が対応することが多い勘定科目です。
監査法人の入社1年目は、どの勘定科目を監査するか?と言われると、まず現金預金というのが一般的です。
なぜなら、結構シンプルなことが多く、会社も間違えにくいからです。
そこで現金預金を監査する際のチェックポイントについて、ポイントを絞って説明したいと思います。
経理業務をされている方や、決算書を見る仕事をされる方も、監査で見ている目線を感じてもらえればと思います。
(※)実際の専門家レベルの複雑な話は省略していますので、経験のある会計士が見ると物足りない内容ですがご了承ください。また、理解を促すため、ざっくりしとした表現を使っています。
まず現金を抑える
現金預金というぐらいですから、「現金」が含まれます。
つまり、その会社がいくらの現金を持っているか?それを知るにはどうすれば良いでしょうか?「帳簿の現金残高が正しい」というためには?
答えは会計監査の素人でも思いつくかもしれませんが、「現物を見ること」です。そして数える。
目の前に現金があれば、数えた金額と帳簿金額が合っていれば、その現金残高は正しいと言えそうですよね。
これを「現金実査」といいます。
さらに決算日に現金実査をするのは、決算書に載ってくる決算日時点の現金残高を抑えるためです。
この現金実査では、換金性の高い資産も同時に実査して、さらに金庫などの金銭がありそうな場所を同時に見せてもらうのがポイントです。
違う場所に会社のお金が落ちてたら、それは帳簿に載せないといけませんからね。(まぁないですが。笑)
そして預金を抑える
次に預金残高を抑えます。
預金残高を抑えるのは通帳を見るのも良いですよね。なんせ残高がわかるので。
監査で大切なのは、会社が作ったものではない証拠資料(これを外部証憑といいます)と照合することが証拠力の強い監査手続となるのです。なぜなら、会社が好き勝手に変えれる書類じゃないからです。つまり改ざん出来るリスクも社内の資料と比べて低いのです。
飲食店などに行って領収書を貰って、経費申請するのと同じです。
これもほかの人が発行しているものだから比較的信頼しやすい。これは理解できますよね。
預金の監査手続として、最も用いられるのが、残高確認です。
これは銀行員の方であれば、決算期に嫌ほど見てると思います。笑
銀行側に、会社が持っている預金や、その他の金融資産・負債の残高を回答してもらう手続です。
これは、監査をしている監査人が、銀行から直接入手することに意味があります。
つまり、証拠力の強い外部証憑を、会社の手を通らずに監査人が直接銀行から手に入れられるので、その金額はとても信頼出来るのです。
その監査手続のために、銀行員の方(新人の仕事という銀行が多いですが)は決算日付近はバタバタしていると思います。スミマセン。
でも、これはとても大切な手続です。
ちなみに、監査で「確認」と言えば、監査手続を指します。
監査調書に「確認した」と表現するときは要注意です。
「〜に聞いて確認した。」というのは、監査でいう確認ではないからです。「確認した」と「確かめた」は表現を使い分けましょう。
細かいですが、分かっている人からは評価してもらえます。
担保などの注記を抑える
銀行から入手する銀行確認状で、預金が担保に入っていないかなども回答を貰うようになっているのが一般的です。
つまり、銀行と会社の取引関係を洗いざらい回答して貰うのが銀行確認状です。
そこで担保資産があれば、それは決算書に注記され開示されます。
現金預金は不正に使われる可能性があるので注意
現金預金関係で有名な事件で、カイティングという不正があり、世間を賑わせました。
これは預金を水増しするための粉飾操作です。
銀行に小切手を持ち込んで預金化するまでにかかる営業日をうまく利用して、預金残高を多く見せる手法です。
これは典型的な粉飾手法なので今は使われているケースは滅多に見ませんね。。
これを見破るには、決算日前後の当座預金の動きを見るのです。
これには当座照合表を入手する必要があるので、銀行確認状の入手時に同時に添付してもらうのが一般的ですね。
決算日前後で当座預金が変な動き方をしていれば、疑って中身を聞くのが監査の基本です。
監査の基本は、疑うこと
監査の基本は疑うことです。
これあってるの?なんで?どうしてこうなってるの?普通こんなことしないよね?
この契約ならこういった会計処理をしてるハズだよね???
そういった視点が監査には必要です。
でないと間違いなんて見つかりません。
新人会計士には、ここを意識してもらいたいですね。
何事も勉強、経験です。