- 相続税で論点となる土地評価「使用貸借」
- 使用貸借が論点となるケース「親の保有している土地に建物を建てて賃貸している家」を相続
- 相続税負担が軽くなる「貸家建付地」の評価
- 相続の相談はお早めに
- 相続税を知らなくてもこれだけは知っておこう
- 安易な意思決定をしないよう、税理士にしっかりと相談しましょう
相続税で論点となる土地評価「使用貸借」
相続税は、被相続人(亡くなった方)の遺産を相続する際にかかる税金ですが、被相続人が生前に持っていた土地を相続する際の評価で論点となるところがあります。
それは「使用貸借(しようたいしゃく)」かどうか。
使用貸借とは、民法で定められた用語です。
使用貸借(しようたいしゃく)は、当事者の一方(借主)が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方(貸主)からある物を受け取ることを内容とする契約。日本の民法では典型契約の一種とされる(民法第593条)。
ウィキペディアより引用
はい、わけがわかりませんね。
かみくだいて説明すると、「親子間などの親しい中で、お金もとらずに物を借りている状態」とでも言うとわかりやすいかもしれません。
典型的には、
- 親が持っている土地を無償で借りて、建物を建てる
- 兄弟が使わなくなった自転車などを借りて通学する
などを指します。
使用貸借は、「無償」の貸し借りであることが特徴的ですが、契約書などは作成していないケースが多いです。
「お兄さん!自転車しばらく借りるので契約書にサインしてください!」とか言いませんよね。。笑
逆に賃貸借契約だと、目にする機会もあるかもしれませんが、アパートを借りる時も、銀行からローンを組むときも賃貸借契約書を交わしますね。もちろん、借りるので有償での貸し借りです。
この点が使用貸借と賃貸借では大きく異なります。
使用貸借が論点となるケース「親の保有している土地に建物を建てて賃貸している家」を相続
相続税の土地の評価では、
— 公認会計士わんころくん@税金修行中 (@wankorokun_0707) July 12, 2019
使用貸借か貸家建付地か、という論点がよく出てきます。
使用貸借、つまり、土地は親のものを使っていて、その上に建物を建てて他人に貸していた場合、
親が亡くなって土地を相続税するときは、「更地」としての評価となり、相続税評価額があがってしまいます。
一方で、貸家として判定される場合は、
— 公認会計士わんころくん@税金修行中 (@wankorokun_0707) July 12, 2019
更地よりも土地の評価額が下がるため、
相続税の支払いも減らすことができます。
元々、親が持っていた土地の上に建物を建てて、それを他人に賃貸して収益を得ているケースはよくある話です。
親が持っていた土地ですので、親が生きている間は親名義の土地。もちろん、使用料を払うわけでもなく、「親子だから」という理由で、息子が建物を自費で建てて他人に賃貸しているケースがあります。
この場合の所有権は、土地は親、建物は息子となりますね。
このときに、親が亡くなって土地を相続しないといけなくなったら、税負担はどうなるのでしょうか。
実は、親自身が自分の土地に建物を建てて賃貸しているケースよりも、土地の相続税負担が重くなってしまうのです。
そのあたりを見ていきましょう。
相続税負担が軽くなる「貸家建付地」の評価
相続で「貸家建付地(かしやたてつけち)」という言葉が出てきます。
貸家建付地の説明は国税庁HPでも記載があります。
貸家建付地とは、貸家の敷地の用に供されている宅地、すなわち、所有する土地に建築した家屋を他に貸し付けている場合の、その土地のことをいいます。
貸家建付地の価額は、次の算式1で求めた金額により評価します。
(算式1)
貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
この算式1における「借地権割合」及び「借家権割合」は、地域により異なりますので、路線価図や評価倍率表により確認してください。
国税庁HP 『タックスアンサー No.4614 貸家建付地の評価』 より引用
つまり、持っていた土地の上に建物を建てて、その建物を賃貸している場合には、自用地(自分で使っている土地)よりも評価額が低くなりますよ(税負担が減る)ということです。
これは、イメージしやすく解説すると、
他の人がその建物を借りていることで土地の使用が制限されるため土地の相続税評価額を減額してあげますね、という制度になっています。
一方で、さきほどから説明していた「使用貸借」のケースだと、親(被相続人:亡くなった方)の土地に建物を建てて他人に貸しているため、賃貸用の建物が建っているにも関わらず「自用地」としての評価になります。
つまり、更地と同じ扱いを受けるのです。
更地ということは、税の減額を受けられず、相続税評価額が丸々対象になってきます。
(建物があるにも関わらず、です)
ちょっと応用編では、もし土地と建物の所有権が親(被相続人)2分の1、息子(相続人)2分の1のケースはどうするか?という論点もあります。
相続の相談はお早めに
案外ややこしい相続税の評価。
対象になりそうな方は早めに知り合いの税理士など専門家に相談しておきましょう。
生前に対策しておくことで相続税の支払が大きく変わるケースもあります。
《無料税理士紹介サイト》
相続税を知らなくてもこれだけは知っておこう
最後に、全く相続税がわからない人でも、これだけは知っておきましょう。
①相続税の基礎控除額
相続税には基礎控除額があります。つまり、相続は誰もが直接・間接に経験することですが、この「基礎控除額」以内であれば、相続税がかかりません。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
※法定相続人が3名の場合は、4,800万円まで非課税
②贈与税の非課税枠
贈与税は、人からお金などの財産をもらった際にかかる税金です。
贈与税は年間110万円まで非課税枠があります。
つまり、毎年110万円までお金をタダで貰っても贈与税が課されません。これを上手く利用して節税対策をしている資産家の方もいます。
ただし、相続税の税回避をさせないため、相続開始前3年以内に贈与があった場合は、相続財産に加算して相続税がかかります。
これを、一般的には「生前贈与加算」と言われています。
※なお、上記の内容は全て執筆(2019年時点)の税制に基づいて記載しています。
安易な意思決定をしないよう、税理士にしっかりと相談しましょう
税金に関しては知らないことで損する制度がたくさんあります。
相続税でいえば、相続時精算課税制度や、小規模宅地の特例などはその最たる例です。
相続時精算課税制度に至っては、一度適用すると二度と暦年課税に戻すことができない制度となっていますので慎重な判断が必要です。
また、税理士であれば誰でもすべての税法に精通しているとも限らないのです。
当然、お医者さんでいうところの「内科」「小児科」「整形外科」「眼科」などと同じように、税理士にも得意・不得意があります。
要望にあった税理士を検索できるサイト(税理士ドットコム)もありますので、その分野で信頼できる税理士を探しやすい時代になりました。
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