法人化による相続税の節税メリットについて
相続税はその名のとおり、「相続時」に課税される税金なので、
「個人」に課せられる税金です。
つまり、「法人」であれば相続税は当然かかってきません。
この「法人化」をうまく活用することで相続税の節税対策を行うことが可能な場合があります。
特に賃貸不動産を所有しているオーナーの相続税対策には、法人化(法人成り)が活用されるケースが多いことが特徴です。
法人税と所得税の税率差を利用
法人に課せられる税金は「法人税」、個人に課せられる税金は「所得税」といった特徴があります(その他、地方税等もありますが説明をシンプルにするため割愛します)。
法人に課せられる法人税の税率は、売上規模が大きくなったからといって、比例的に税率が増加するようなことはありません。
仮に法人税率が20%だったとした場合、利益(厳密には課税所得)が10万円だったとしても、1,000万円だったとしても同じ20%です。
一方で、個人に課せられる所得税は「累進課税」のため、利益が増えれば増えるほど反比例的に税負担が大きくなります。
例えば、課税所得が150万円だった場合に適用される所得税率は5%なのに対し、
5,000万円だった場合には最高45%(住民税も合わせると55%)とかなり差がでてきます。
つまり、個人で利益が大きくなる場合には法人化のメリットが大きくなる可能性が高いということです。
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贈与税をうまく回避(家賃収入がある場合など)
家賃収入があるような不動産賃貸業を営む個人自営業者の場合、
家賃収入の手残り分が毎年出ているケースではその手残り分が将来にわたってその人の財産を形成していきます。
家賃収入からの手残り分が残れば残るほど、将来の相続財産も多くなります。
相続財産が多くなるということは、当然に相続税の負担も大きくなります。
この不動産収益を生む源泉である賃貸物件(建物)を法人に移すことで、
不動産収入は法人のものとなり、個人から切り離すことができます。
つまり、どれだけ不動産収入からの手残り分がでようと、個人の所得や将来の財産には全く影響が出なくなります。
仮に、この手残り分が個人の財産として残っている場合、相続税対策としては、その手残り分を利用して生前贈与を検討する必要があります。
法人をうまく活用することで、この贈与の手間を省くことができ、
場合によっては贈与税も負担する必要がなくなります。
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退職金などの会社制度を利用できる
法人化することによって、退職金制度を利用することが可能になります。
中小企業でよく利用される有名なところで言うと、
・小規模企業共済
・中退共
が挙げられます。
例えば死亡退職金を利用することで、相続時に死亡退職金が支払われるにも関わらず、一定の金額(法定相続人の数×500万円)までは相続税が非課税といったメリットがあります。
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法人化による相続税のデメリットについて
これまでの説明では、法人化のメリットを説明してきました。
当然、メリットもあればデメリットもあることが世の常です。
法人化によることでデメリットがでるケースについても紹介したいと思います。
法人維持コストがかかる
もともと法人を所有している会社経営者であれば別ですが、そうでない場合には法人を設立する必要があります。
(むしろ相続税対策をする方で法人を所有している方の方が少数派です)
もちろん、法人を設立するには、
・登記費用
・登録免許税
・資本金
などの初期費用が必要になります。
(株式会社ではなく、合同会社を設立することで設立コストを低く抑える方も最近は増えてきました)
法人の維持コストと所得税の税負担軽減額(税効果額)を比較衡量して法人化するかどうかを検討する必要があります。
この点については少し専門的な部分になりますので、税理士などの専門家にシミュレーションを依頼する方が多いです。
税理士に依頼する場合には、(場合によっては)コンサルティング費用や、法人顧問を依頼する場合には顧問料が必要になります。
このあたりもいくらの金銭的メリットがあるのか、を考えて法人設立を考える必要があります。
銀行による融資が必要なケースがある
法人を設立して個人の所有している不動産を法人に移転することで、税務メリットを享受しようとする場合、法人が個人から不動産を購入する必要があります。
つまり、法人に不動産購入資金が必要になります。
この資金を資本金で賄おうとすると結構な出費が伴うので、
多くの場合は銀行から融資を受けることになります。
融資を受ける場合には、当然、元本返済とあわせて利息の返済も必要になります。
この利息返済が税効果を上回ってしまうと本末転倒ですので、十分な事前シミュレーションが必要です。
また、かなりの個人財産(特に預金関係)がある方においては、相続税対策を兼ねて不動産を購入するケースもあります。
一見、不動産対策として最もらしい方法ですが、
相続税対策に目が眩んで「収益不動産としての価値」を見落としてしまっているケースも多々ありますので注意が必要です。
いくら相続税対策になったからといって、その不動産が「お荷物の」資産(実質負債)のように収益性が見込めない場合には本末転倒です。
特にこういった不動産には注意が必要です。
・郊外の空室率が高くなりそうな地域のマンション(立地の悪さ)
・賃料設定が高く(ないしは安すぎて)、安定収入が見込めない不動産
安易な意思決定はトラブルのもと。税理士にしっかりと相談しましょう
今回説明したように、税金に関しては知らないことで損する制度がたくさんあります。
相続税でいえば、今回のように「法人化」をうまく活用することで税負担が全く変わってくるケースもあります。
また、相続時精算課税制度や、小規模宅地の特例など、相続税には他にも様々な優遇措置が用意されています。
また、税理士であれば誰でもすべての税法に精通しているとも限らないのです。
当然、お医者さんでいうところの「内科」「小児科」「整形外科」「眼科」などと同じように、税理士にも得意・不得意があります。
要望にあった税理士を検索できるサイト(税理士ドットコム)もありますので、その分野で信頼できる税理士を探しやすい時代になりました。
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