この業界にいると、これから公認会計士や税理士を目指すかどうか迷っている方から質問をいただくケースが時々あります。
これから受験を始める方で、簿記の勉強を一通りした程度という方からの質問で多いのが「公認会計士と税理士のどちらが良いでしょうか?」という質問です。
結論から言えば、絶対的な答えはないのですが、私自身がこの業界にいる中で感じた両者の違いについて、つらつらと書いてみようと思います。
公認会計士と税理士の違いは?
このテーマについては、昔に一度書いたことがあります。
当時思っていたことと、今考えていることは少し違うかもしれませんが、参考にこちらの記事をご覧いただければと思います。
公認会計士の特徴(試験・キャリア)
公認会計士の特徴は、やはり独占業務である会計監査業務がある点です。
上場会社や非上場会社でも大規模な会社は、公認会計士の法定監査が義務付けられており、その多くを監査法人(公認会計士の集団組織)が担っています。
晴れて公認会計士試験に合格すると、多くの方が監査法人に就職します。
そのため、BIG4と呼ばれる大手監査法人では、1つの法人で同期が200人を超えたりします(その同期全員が公認会計士試験の合格者です)。
今思えば、頑張ってマンモス予備校に入って資格試験を突破し、やっとの思いで監査法人に就職した途端、また会計士だらけのマンモス企業で試練がはじまるのです(言い過ぎかもしれませんが)。
そんな会計士だらけの組織では、監査チームを組んで上場会社を中心に監査業務を行なっていきます。私の個人的な経験と偏見では、監査法人にはとても優秀な方(専門知識が豊富で、頭の回転が速く、コミュニケーション能力が高い人)が大勢おられます。
金融機関などの前職がある方も多く、非常にダイバーシティに富んだ特殊な組織が監査法人です。そのため、個人的にはファーストキャリアとしてBIG4を選ぶことはとても良い選択だったなぁと今では感じています。
公認会計士が集まって監査業務をしていると、知識と経験が大企業向けになってきます。
上場企業としてあるべき会計処理や内部統制など、クライアント企業の担当部署と熱く議論する時間が増えるのです。
もちろん、それが大企業以外(例えば、中小企業)で全く使えないわけではないですが、やはり温度差を感じる方は多いようです。
そのような経験の中で、「税理士業務を経験したい」という思いで税理士業界に転職する会計士もいます(私もその一人です)。
税理士業界に転職してまず壁にブチ当たるのが、中小企業向けの会計と税務です。監査法人であれだけ「あるべき」会計処理を議論してきたのにも関わらず、中小企業を相手にすると全然使うべき引き出し・優先度が変わってきます。
このギャップから、税理士業務に苦手意識を持つ会計士も多いようです。
公認会計士の独占業務である会計監査の特徴から、公認会計士は比較的大規模な案件に携わるキャリアを望む方も多い傾向にあります。M&Aのアドバイザリー業務については、公認会計士の独壇場と言われることもあります。
他には、監査の知識・経験の応用から、企業にハンズオンの形で参画し、CFOとしての役割を果たすキャリアを選択する会計士もいます。
勝手なイメージでは、会計士は案外チームプレーで大きな仕事をすることが好きな人が多いようです(逆に、直接感謝されている感じがしない、ということでやりがいを感じられない人もいます)。
会計監査の特殊な部分として、会社のためではなく、投資家などのステークホルダー(財務諸表利用者)のために、監査を行なっている点が挙げられます。
監査先のお客様から報酬を頂くにも関わらず、投資家達のために仕事をしているのです。こんな特殊な仕事は監査以外にあるのでしょうか?(お金を払ってもらう先と、向いている先が形式的に違うのです)
その点、非常にバランス感覚が必要な仕事ともいえます。
税理士の特徴(試験・キャリア)
税理士試験は、5科目の試験科目に合格する必要があります。
試験科目については、公認会計士試験と異なり1科目ずつ合格科目を積み上げていけるので、働きながら資格取得を目指す方に人気の職業です。
その傾向からか、税理士受験生の方の年齢層は非常に幅広い印象です。
私が資格試験の予備校で勉強していた頃は、税理士試験の受験生は社会人の方が多い印象でした(一方で公認会計士試験は大学生が多かったです)。
税理士試験を受ける方の特徴は、全科目合格する前に税理士事務所等で実務経験を積みながら勉強されている方がいる点です。例えば、全5科目のうち、3科目合格時点で会計事務所に就職し、1年に1科目ずつ2年計画で全科目合格を目指す方もおられるようです。
私が勤めていた会計事務所では、約20%が税理士、約50%程度が勉強しながら働く正社員、約30%が事務員さん(パート職)でした。
私自身は監査法人に勤めていた経験があったため、正直、職場環境面では非常にギャップを感じました(うまく事務員さんを活用している点は学ぶべきところもありました)。
実際に税理士業務を行った際に感じたことは、税理士はお客様から直接感謝されやすい仕事だということです。
税務顧問を中心とする税理士は、中小企業の社長さんと直接コミュニケーションを取る機会も多いです。また、節税や決算業務は直接会社のために行なっているため、お客様との関係性が構築しやすい仕事です。
この点、とてもやりがいを感じやすい職業だと思います。
この点は、公認会計士の監査業務と異なり、お客様と税理士の利害が基本的に一致します。
また、長年自分が担当した顧問先であれば、自分が独立開業した際にもついてきていただけるような深い関係のお客様が多くなりやすいのも税理士の特徴です。非常に人間味のある仕事です。
あなたはどっち向き?
今回の記事を読んでみて、あなたはどっち向きだと感じたでしょうか。
受験を始めた頃の学生の私は、「公認会計士になれば税理士登録もできるから」程度のきっかけだったようにも思いますが、業務自体は似て非なるものです。
公認会計士と税理士のどっちを目指すべきか?については、自身のキャリアと真剣に向き合ってみることで方向性が見えてくるかもしれません。
私自身も受験時代には気づかなかった両者の特徴が(言語化が難しい部分も含めて)よく感じられるようになった気がします。