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日産ゴーン氏報酬50億円の過少申告から学ぶ有価証券報告書と公認会計士による会計監査

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ゴーン氏の役員報酬過少申告事件、Twitterでも盛り上がっているようです。

 

有価証券報告書って会計士が監査してるんじゃないの?って声もあったので、これを機会に少し学んでみましょう。

 

Twitterタイムラインの状況

 

有価証券報告書に報酬の記載とは?

 

有価証券報告書は、簡単に言えば株主や債権者などの利害関係者のために、企業の決算を表現している資料です。

その「一部」が公認会計士(監査法人)の監査対象となりますが、今回話題になっている報酬の記載とは、どこを指すのでしょうか?

 

まず、有価証券報告書では「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載欄が設けられています。

そこに役員報酬の総額を記載する必要があるのですが、各役員の年間報酬が1億円以上の場合は、個人別の開示が求められるのです。

 

日産自動車の平成29年度の有価証券報告書にはこのように記載されています。

 

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カルロスゴーン氏 735百万円。

 

これが本当は2倍ぐらいだったんだよ、という内容だとニュースになっていました。

 

5年間で約50億円の過少申告。

 

発覚の原因は、内部告発だとか。

 

こんな大きな金額を見抜けないものでしょうか?

そのあたりを考えてみたいと思います。

 

 

会計士の会計監査の範囲は?

 

そもそも公認会計士(監査法人)の監査の範囲とは、どの程度なのでしょうか。

 

そもそも監査って?って方は、この記事をどうぞ。

監査法人とは?給料は?年収は?わかりやすく説明してみる。一言でいえば、公認会計士の集まる組織。 - 公認会計士わんころくんの人生戦略

 

会計士は、基本的には「経理の状況」に掲げられている内容に重要な虚偽表示がないかどうか?をチェックすることが求められています。

 

「基本的には」と「重要な」がミソ。

 

「基本的には」と言っているのは、

経理の状況でなくても、経理の状況に関連する情報は整合性の確認が求められているからです。

なぜなら、整合性が全く取れていないと見る人が混乱しますからね。

 

つまり、今回の役員報酬についても、「コーポレート・ガバナンスの状況等」は監査の対象外ですが、その中の役員報酬については、経理の状況にある損益計算書(PL)などに関連するため、会計士がチェックする必要があります。

 

また、当然、役員報酬がPLと整合していないと、普通は気付くでしょう。

ということは、決算書自体を誤魔化している可能性もあるわけです。

ここは、事件の全容がわからないのでなんとも言えませんが。。

 

 

2つめのポイント、「重要な」というのは、

会計士はハッキリ言って、すべての誤りを見つけにいってません。

 

重要なというのは、監査の計画によって異なりますが、今回の日産の規模だと役員報酬はそこまでフォーカス出来ていなかった、という可能性はあります。

 

単純に考えて、利益が1億円ある会社の5%で、5百万円。

日産自動車は連結純利益で7,000億円規模なので同じ5%でも350億円です。

 

5年で50億円といえば確かに大きいですが、

監査では、一律に大きいと言い切れないのが実情です。

 

このあたりも考えつつ、今後の監査法人に対する責任がどう問われるのか?

 

個人的には、仕事目線で結構気になるニュースでした。

 

 

 

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