監査法人の大量合格世代の大量採用は本当に悪だったのか?
— 公認会計士わんころくん@雑記ブロガー (@wankorokun_0707) 2018年9月2日
そのあと大規模なリストラもやってるけど、結果10年ほどたってその世代が監査法人を支えている。
むしろその世代が多くいるからこそ、人手不足でも回ってるのが実情。
そう、2007年〜2008年は公認会計士試験合格者が大量に出たわけですが、そのときは今後の公認会計士業界の人手不足を考えてことだったんですよね。
それが今はどうなってるのか。
このあたりを考えてみたいと思います。
公認会計士試験大量合格時代
一部では公認会計士業界の黒歴史とも言われる大量合格。
これは元々金融庁が将来公認会計士業務が増えることも想定している中で、年間合格者数を2,000〜3,000名に増やすという目標が2007年〜2008年の試験にかけて掲げられたことが始まりでした。
この合格者増加目標の背景には、
2008年4月1日以降事業年度から開始した「四半期レビュー制度」や、同時期から始まった「J-SOX(内部統制報告制度)」の導入が控えていることもあり、会計士の需要が益々増加するだろう、といった読みがありました。
今では当たり前のように上場会社は四半期決算を行っていて、内部統制監査も受けていますが10年ほど前まではやってなかったんですよね。
それまで決算といえば、半期決算と期末の年度決算のみ。
最近の公認会計士試験合格者でいうと、2017年で1,231名の合格者(論文式試験)がでましたが、大量合格時代の目標数2,000名に遠く及んでいません。
もちろん、業界は人手不足。
2008年の合格者3,625名と比較すると3分の1ぐらいまで合格者が減少しています。
公認会計士試験の合格者推移は別の記事で紹介していますので参考にどうぞ。
多くの公認会計士試験合格者を輩出した世代であることから合格率も高く、2008年試験では17.1%の人が合格しています。
この時代の人たちは、公認会計士受験生の中でも皮肉な表現で「07(ゼロナナ)」や「08(ゼロハチ)」と呼ばれていました。。。今でも言われているんですかね。
監査法人の大量採用
多くが合格できた時代でもあり、合格者の多くが監査法人に入所し、監査法人だけでは受け皿が足りずに、監査法人以外でも多く採用されたと聞いています。
良くも悪くも、いろんなキャラクターの人が大手監査法人に採用されました。
採用されたはいいものの、人手は余る状態。
聞いた話では、この頃の新人は毎日定時に帰って飲みに行くぐらいの余裕があったようで、自己研鑽の時間も定時内に結構ありました。
今ではなかなか考えられませんが。。
金融庁の方針(会計士の人材を増やす)もあって、多くが監査法人に入所し、監査法人だけでは受け皿が足りずに、監査法人以外でも多く採用されたと聞いています。
実際のところはわかりませんが、監査法人も政府の方針で必要以上に受け入れざるを得なかった、という背景があったのかもしれませんね。。
大規模リストラ(大量退職)
多くの人を採用するとどうなるか。
当然、採用を絞るのが難しくなるので、優秀な人からそうでない人まで採用されたわけですね。。
そうなると、次第に法人としてもお荷物となってしまう人材が出てくるのが実際のところです。
考えてみてもそうですよね。
仮に試験合格者が2,000人だったとして、大手監査法人の採用予定数が2,000人だったとしたらどうでしょうか。
極端な話をすると、「採用=大手監査法人に入所」となるわけですよね。
そこで採用から数年たった2010年〜2011年あたりに大手監査法人で大規模リストラ(大量退職)が行われます。
監査法人は希望退職者を募り、手を挙げた人には結構な退職金を出したそうです。
また、大手の監査法人トーマツでは2011年にリストラを実施、440名の募集に対して600名の希望者が殺到。
経営者層のパートナーですら、幹部クラスは年俸1,500万円の不労所得を保証しても出ていってしまったとか。
おそらく僕がその場にいたら手を挙げて退職していたでしょうね。笑
なんとなく、その時に手を挙げた人の気持ちがわかります。
監査は公認会計士の仕事をする上での基礎だから経験はしたいけど、将来監査だけで生きて行く気はないって人が殺到したのでしょう。
人手不足に悩む監査法人
この大量退職あたりから業界の雲行きが怪しくなってきます。
次は一転して人手不足の時代へ。
それに合わせて大手の受験予備校は「これでもか」というぐらい宣伝しはじめます。
「公認会計士は今人手不足!ニーズも高く、将来性あり。目指すなら今!」みたいにね。
一方で、四半期決算やJ-SOXが数年経って落ち着いてきた頃に、大量合格世代の会計士が少しずつ余ってきたこともあって、次に金融庁は少しずつ試験合格者を絞りはじめます。。
風評被害もあって、受験者と合格者はそこから右肩下がりに。。
また、公認会計士が余っているということで、監査法人も採用を絞り、就職氷河期も訪れました。ちょうど、2012年ぐらいですかね。
この頃に大手監査法人に入所した方は少ないものの、レベルの高い精鋭達が集まっている印象です。
ただ、最近この世代も退職し、独立したり転職したりすることでほとんど監査法人に残っていないのが現状ではないかと思います。
そして、2014年以降から受験者数もなかなか増えずに、様々な不正事例が発生し監査に対する世間の目も厳しくなってくる中で、監査業界が忙しくなってきています。
当然、人手も足りていない。
ここで今活躍しているのが、2007年や2008年に合格した世代なんですよね。
その世代の方は今と比べると多くの人が監査法人にいます。
ちょうど10年程度経験を積むと、多くの人が高度な実務経験と知識をつけ、第一線で活躍する欠かせない存在となっているのです。
10年前は不要だといって切り捨てられ、煙たがられた人達が、今は欠かせない存在となっています。
僕の印象でも、その世代が今監査法人にいなかったら、もう仕事は回らないと思います。それぐらい優秀な人が多いし、個性的で面白い人も多いです。
こう考えてみると、あの頃の大量合格は悪だったのか?という答えは「No!」です。
むしろ、10年という長期スパンでみると豊富な知識と高度な経験を積んだ人材が豊富に揃っているということです。むしろ、その人たちに業界は支えられているのです。
法人の採用も長い目でみていく必要がありますよね。
あとはコストとの兼ね合いですが。。。
現状は受験者が以前に比べて少なく、当然監査法人も採用数が少なくなっています。
10年後、どんな未来が待っているのでしょうか?
採用活動もAIがやるようになって、すごい効率化してたりして。笑
いずれにせよ、今後はAIで公認会計士の業務をサポートし、監査手続の一部を自動化していくことが必須になるように思います。
公認会計士の仕事がなくなるのか?とか、AIに代替されるのでは?と悩んでいる受験生も多いかもしれませんが、まだまだそんなことはないと思いますけどね〜。というのが個人的な感想。
このあたりが気になる方はこちらの記事も参考にどうぞ。
これからどう業界が変化していくのか、見ものです。
とにかく、長い目で見て欲しい。パッチワークだけはやめて欲しいですね。