近年、RPAが各業界で盛り上がってきているようです。
会計士業界というより、僕の周りでは税理士業会でRPAが盛り上がってきています。
公認会計士の主な仕事は会計監査です。
会計監査は、公認会計士の独占業務であって、公認会計士資格がないと実施できない仕事であることは当ブログでも以前から説明しているところです。
RPAは税理士業務にはダイレクトに役に立つかもしれませんが、
会計士業務には少し似つかない部分もあります。
似つかないということは、ある意味、安心材料でもあります。
そのあたりの話をしたいと思います。
そもそもRPAとは?
RPAとは、「Robotic Process Automation」の略で、頭文字をとってRPA(あーるぴーえー)と呼んでいます。
直訳すれば、「ロボットによる作業の自動化」とでも言えるでしょうか。
RPAとは、具体的にはアプリケーションソフトを利用して、
ロボット(というよりパソコン)に作業を記憶させて、自動的に処理する作業のことを指しています。
通常、パソコンの作業は、マウスなどを使ってプログラミングの知識に乏しい素人でも触れるように設計されています。
プログラミングをしようと思うと、なんやら難しい知識が必要だと思われますが、
RPAはパソコン処理の自動化(ある種のプログラミング)を直感的に作れるように各社がソフトを作成しています。
有名どころのRPAソフトで言えば、
- UiPath
- WinActor
といったところでしょうか。
RPAソフトを活用することで、普段パソコンで行っている面倒な単純作業を
ロボット(パソコン自体)が覚えてくれて、ボタン一つで一連動作を処理してくれるようになります。
そのようなプログラムを組めるソフトの登場により、RPAが盛りがってきているとも言えるでしょう。
RPAのお世話になる税理士業務
税理士事務所は、ある程度規模が大きくなると必ずと言っていいほどパートさんが勤務しています。
パートさんの仕事としては、
- 電話当番
- 月次仕訳の単純入力
- 申告書の単純入力(転記作業)
- 資料のコピーやPDF
など、「時間があれば、専門知識があまり要求されない」仕事が多いです。
特に、単純入力作業については、
「決まった様式に入力したものを、決まった箇所に転記する」といったような、
誰が考えても非効率な業務も残っているのが現状です。
それをRPAを利用することによって、
パートさんが実施してくれている作業をロボットがやってくれるということです。
つまり、RPAを活用することにより、パートさんの人件費が浮くことにつながります。
こういう点に着目すれば、税理士事務所の多くはRPAをうまく活用することで、
業務の大幅な効率化(無駄な作業の削減)を図ることができるのです。
一方で、無駄な作業を削減したのはいいものの、
「それじゃぁ、パートさんの仕事がなくなるじゃない」という声が聞こえてきます。
これが、いわゆる「AIに仕事が取られる」と言われだしている発端ではないかと思います。
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会計士業務はパートさん(補助アシスタント)が少ない
一般的な会計事務所で行っている税理士業務と異なり、公認会計士が生業としている会計監査は少し特色が異なります。
大手の監査法人であっても、実はパートさん(業務アシスタント)の数はそれほど多くありません。
むしろ、中堅の税理士事務所の方が圧倒的にパートさん比率が多いでしょう。
監査法人も、最近は少しずつアシスタントを増やして有効活用するような動きを見せているようですが、それでも圧倒的に少ないと思います。
その根底にあるのが、「監査業務の専門性」です。
監査業務で一番時間がかかるのは「監査調書の作成」です。
これは、どんな会社でも同じものを作っているように思えて、そうでもありません。
会社によって、当然使う資料が異なり、担当者によっても視点が異なってきます(重要な部分は同じでしょうけど)。
結果として、監査調書も作る会計士によって出来上がりが違ってくるのです。
これは、税務申告書ではありえないことです。
税務申告書であれば、記入する場所にルールがあり、ルールに則ってあるべき数値を決められた場所に入力することが必要です。
しかし、監査調書にはそれがありません(全くないとも言えませんが)。
ここがアシスタント(パートさん)を使っている人が少ない大きな理由の1つです。
もちろん、監査調書を作るにあたっても、入力作業はあります。
決算書分析の前提となる数値を見るために、「まずは」入力しなければ始まらないからです。
このような入力作業であれば、無理に有資格者が自ら行う必要もないので(その分、お客様に請求する金額が増えるのであれば尚更)、アシスタントの方に作業してもらうことが多いです。
ただし、まだまだその「単純作業」の整理や切り分けがうまくできていないのが現状だと思います。
結果として、「アシスタント(パートさん)に振る仕事が少ない」のが現状です。
(最近は、工夫して少しでも単純作業を切り分けるようになってきています)
RPAは単純作業の効率化
RPAは、どこまでいっても単純作業の効率化を目指すものであり、
判断を行ってくれるものはでありません。
単純な入力作業や転記作業、定型フォームの作成等はロボットの得意とする分野です。
しかしながら、
- 実績のないもの
- 指示が明確でないもの
はロボットにはできず、作業の曖昧さを排除する必要があるのです。
会計監査の仕事はルーチンじゃないことが多い
会計監査の仕事は、まだまだルーチンではできないことが多いです。
もちろん、ルーチンでできる仕事ばかりであれば、専門家は不要です。
公認会計士等の専門家は「専門知識」を持つことを武器にして仕事をしていると思われがちです。
もちろん、そのとおりではありますが、「専門知識の取捨選択」と「クライアントコミュニケーション」が同時に求められます。
何が言いたいかというと、1+1=2 のような答えであえば、ロボットが簡単に処理してくれます。
もちろん、そのような単純計算の積み上げであれば、公認会計士もロボットには全く勝ち目がないでしょう。
このようなことを想像するからか、
会計監査をしたことがない人は、「会計士の仕事はAIにとられる」と言うのです。
でもやっぱり、「そんなことないでしょう」と言えるのは監査をやってきたからだと自負しています。
この気持ちは会計士の人であればわかるでしょう。
会計士業界に限って言えば、まだRPAがうまく導入されるのは先の話になりそうです。
少なくとも、RPAが入ったことで嬉しい変化はあっても、(仕事がとられるような)悲しい変化は少ないでしょう。
もしあなたが公認会計士を目指しているのであれば、迷わず目指して欲しいと思います。
ネットではいろんなネガティブな情報が流れていますが、良いこともたくさんあります。
ぜひ、周りの声に過度にふりまわされないようにして欲しいものです。